設備投資と実質賃金、カーボンニュートラル税制、日米関税交渉をめぐる国会質疑
国会質疑では、日本の設備投資と実質賃金の低迷、カーボンニュートラル投資促進税制、太陽光発電への税制優遇、米国の対日関税などが取り上げられた。
質疑全体を通して、日本企業の国内投資を増やし、賃金上昇につなげる政策の必要性と、脱炭素政策や対米通商政策の妥当性が議論された。
※以下は提供された文字起こしをもとに内容を整理した要約。固有名詞や一部の数値は、音声認識の誤変換を含む可能性がある。
日本は設備投資も実質賃金も低い
質疑では、主要国の「実質民間設備投資の年平均増減率」と「実質賃金の年平均増減率」を比較したグラフが示された。
紹介された数値は、おおむね次のとおり。
- アメリカ
- 設備投資:約4.5%
- 実質賃金:約1.4%
- 韓国
- 設備投資:約3.8%
- 実質賃金:約2.1%
- 日本
- 設備投資:ほぼ0%
- 実質賃金:約0.2%
日本は比較対象国の中で、設備投資と実質賃金の双方が最も低い位置にあると指摘された。
なぜ設備投資が増えると賃金も上がるのか
経済産業省は、国内投資の増加が賃金上昇につながる理由を次のように説明した。
- 企業が国内投資を拡大する
- 生産能力の増強や新市場の獲得につながる
- イノベーションによって付加価値の高い製品やサービスが生まれる
- 企業収益が増える
- 賃上げの原資が拡大する
物価上昇を上回る持続的な賃上げを実現するためにも、国内投資の拡大が重要だという認識が示された。
投資促進税制と積極財政
質問者は、設備投資を増やして実質賃金の上昇につなげるため、投資促進税制が有効だと主張した。
さらに、次のような施策を提案した。
- 防災を含むインフラ整備を積極財政で進める
- 国内需要を喚起する
- コーポレートガバナンス・コードを見直す
- 企業が長期投資を行いやすい環境を作る
- 株主配当を増やす場合には、賃金も同時に引き上げる仕組みを検討する
経済産業大臣は、日本企業では株主還元が増えている一方、賃上げを含む成長投資は欧米と比べて低い水準にあると説明した。
政府は、17の戦略分野で予算、税制、政府調達、防衛調達、規制・制度改革などを組み合わせ、企業の「稼ぐ力」と持続的な賃上げを後押しする方針を示した。
カーボンニュートラル投資促進税制とは
この制度は、企業が生産工程の脱炭素化と付加価値向上を同時に進める設備投資を支援するもの。
政府答弁で示された実績は次のとおり。
- 累計適用件数:168件
- 特別償却の適用額:約100億円台
- 税額控除:約163億円
- 設備投資額:約1,820億円
- 認定件数の約7割:製造業
適用額が大きい設備として、工場のボイラー、コージェネレーションシステム、太陽光発電設備などが挙げられた。
税制の期限が延長された理由
カーボンニュートラル投資促進税制は、令和10年3月31日まで延長された。
経済産業省は、延長理由について次のように説明した。
- 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、企業投資をさらに加速する必要がある
- これまでの適用実績と効果分析を踏まえた
- 個々の企業だけでなく、サプライチェーン全体の脱炭素化を促す
- 大企業による中小企業の排出削減支援にもインセンティブを与える
太陽光発電への二重支援ではないか
質問者は、太陽光発電設備について次の問題を指摘した。
- FIT・FIP制度によって収益が支えられている
- その財源の一部は、国民の電気料金に上乗せされる再エネ賦課金である
- さらに税額控除も受けられる
- 支援制度と税制優遇の双方を受けることに、国民の理解が得られるのか疑問がある
- 税制の期限延長が十分に知られていない
経済産業大臣は、個別分野ごとの支援制度を細かく考慮すると制度が複雑になり、申請コストが増えると説明した。
米国の対日関税
政府答弁では、2025年の米国による対日輸入額と、主な対象分野の金額が示された。
- 対日輸入総額:約1,600億ドル
- 鉄鋼・鉄鋼派生品:約160億ドル
- アルミ・アルミ派生品:約40億ドル
- 自動車・自動車部品:約515億ドル
特に自動車関連の割合が大きく、自動車関税を抑えることの重要性が確認された。
米国の関税措置は今後どうなるのか
質疑では、米国の関税措置をめぐる法的根拠の変化も取り上げられた。
- IEEPAに基づく相互関税に違憲・違法判断が出た
- 通商法122条に基づく一律関税へ切り替えられた
- 122条関税についても違法判断が出た
- 米政権は通商法301条への切り替えを検討している
- 過剰生産能力や強制労働を理由に追加関税を課す可能性がある
日本も301条調査の対象国に含まれているとされる。
日本政府は、構造的な過剰生産能力は存在しないこと、日本企業に国際基準に沿った人権対応を求めていること、既存の日米合意を着実に履行するよう求めていることを説明した。
まとめ
今回の質疑では、主に次の問題が議論された。
- 日本は設備投資と実質賃金の伸びが主要国より低い
- 設備投資の拡大は企業収益と賃上げの好循環につながる
- 株主還元に偏らず、人材・設備への長期投資を増やす必要がある
- カーボンニュートラル投資促進税制は、製造業を中心に利用されている
- 太陽光発電への税制優遇とFIT・FIP制度の併用には疑問が示された
- 米国の関税措置は法的根拠や対象が変化しており、先行きが不透明である
- 日本政府には、状況の変化に応じた交渉カードを準備することが求められる
設備投資、賃金、脱炭素、税制、関税は別々の問題に見えるが、いずれも日本企業の競争力と国民生活に直結している。